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愛犬の選択肢

文:B-Paws 中沢俊恵CPDT-KA

数年前、興味深い記事を見つけました。

何かをする際に「あれしていい?」「これ食べていい?」と、いちいち親の許可を得ようとする子供に関しての記事だったのですが、自分で選択して決定することが困難な子供が育つ背景には子供に対する親の接し方に原因があるというのです。
常にまず親が先に声を掛けてしまう。「これで遊んだら?」「これにしたら?」「もうやめたら?」と子供が決断するよりも先に親が子供の決断を促してしまうが故に、子供は親が指示を出してくれるのがあたりまえだと思い、自分で考えて物事を進めていく力、決断力を失ってしまうのだといいます。
(この場合は“失う”と云うよりも、決断力が“育たない”と云うのが適切なのかもしれませんが。)

危険な目に遭わせない為に守ることは必須ですが、子供の気持ちを尊重して暖かく見守ることもとても大切なこと。それは決して、” 放っておく ” と云うことではありません。

・・・いかがでしょうか?
私はこの記事を読み、犬の育て方との大きな共通点を強く感じました。ここに書いてある内容は、犬に限らず、動物を育てるときには大切なことだと思うのです。

愛犬の選択肢

私自身の犬育てのモットーの中には「自分で考え・判断できる犬を育てる」と云うものがあります。その為に飼い主として愛犬には出来るだけ多くの選択肢を与え、愛犬自らが選択した行動で結果を得られるように最低限のサポートを全力で行っていく。
その際には、犬の発するボディランゲージを読み取り、対処し応えることが大いに役立つと感じています。ボディランゲージを読むと云うことは、犬がその瞬間に感じていることを知るということなのですから!
犬であろうと人であろうと相手の気持ちがわからなければ、相手が困っているときに適切なサポートをしてあげることは困難ではないでしょうか。

犬が困ったとき、こちらに協力を求めてくることがあります。そのときに応える。或いは、なんらかのヒントを与える。そんな風にしてキャッチボールのようなやり取りを犬と繰り返していくうちに自然と、犬との間に信頼関係も築かれて行きます。もちろん、困った場面だけでなく、様々な場面に於いてやり取りを積み重ねていく必要がありますが。
犬は社会的な動物です。人は犬にはなれませんが、犬と協力し合って犬の心身を健康に育てることができます。

日常のなかに、愛犬自ら選べる選択肢はどれほどあるでしょうか?
愛犬と豊かな時間をお過ごしください。

 

最後まで読みくださりありがとうございました。

 

B-Paws 中沢俊恵

犬と食事の関係

文:B-Paws 中沢俊恵CPDT-KA

現在、様々なドッグフードやオヤツが販売されており、大切な愛犬の口に入る食べ物にはこだわりたい!という方が増えています。その一方で、愛犬の小食に悩む方もいれば、ダイエットが必要な犬もいる。

今回は犬と食べ物について触れてみたいと思います。

栄養バランスのよい食事を適切量で犬に与えるのは飼い主の責任です。動物福祉を絡めずとも、当然のことと言えるでしょう。ウェットフード、ドライフード、手作り食・・・といろいろありますが、何を与えるかは飼い主の好みによってもわかれてきます。

ネオフィリア(neophilia)という犬の性質をご存知でしょうか?

犬は環境が変化することはあまり好みませんが、新しいオモチャなどは大好きです。例えすぐに飽きても・・・。簡単に説明すると、このように犬が目新しいものを好む傾向にある性質のことをネオフィリアといいます。私たち人間と犬が楽しくお付き合いできるのも、この性質が大きく関係していることでしょう。

さておき。

犬の嗜好性のほとんどは、パピーの離乳後から飼い主が愛犬に何を与えていたかに影響を受けています。つまり、嗜好性も社会化によって形成されていくということなのです。決まった一定の物しか与えられていない犬は、食べ慣れないものに対してあまり興味を示さないことがあります。口に入れても吐き出してしまったり、ほんの少しだけ食べて残してしまうなどの行動が見られることもあるでしょう。

ネオフィリアにより本来犬は目新しい食べ物を食べたがるものなのですが、それまでの積み重ねた経験により、決まったものしか食べたがらなくなるということが発生するのです。

決まったメーカーの決まったフードのみを与える方は少なくありませんが、もしアレルギーや体質など健康面に問題がなければ、質の良い様々な食べ物を与えていくことを私はおすすめします。その中でさらに愛犬の好みを把握していくのも、犬との生活の楽しみの一つと私は考えます。

様々なものを積極的に食べる個体の方がトレーニングもしやすくなりますしね。

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摂取される栄養は、犬の様々な行動にも影響を与えています。

ですのでフードの原材料に何が使用されていて、何がどのくらい含まれているかを知っておくのも大切なことと言えるでしょう。細かいことまですべてを把握することは困難だとしても、おおまかなことくらいは知っておいて損はないはずです。

 

原材料名の先頭が一番配合の多い材料となるのは周知の事実。犬は雑食ではありますが、先頭にくるのは肉であることが好ましいと言われています。副産物やミールではなく、〇〇肉。

必ずしもフードの成分“タンパク質”の数値が高いほど良いということはありませんが、全体の何パーセントがタンパク質なのかをチェックするのも興味深いものです。

基本的に犬は高タンパク質な食べ物を好みますが、高タンパク質な食事は犬の攻撃性を増加させることが研究によって判明しています。同時に、高タンパク質な食事は腎臓にも負担を与えてしまうので、肉さえ与えておけば良いと云うものではありません。腎機能に問題を抱えた場合は低タンパク質の療法食が処方されるくらいですから。

攻撃性の高い犬に低タンパク質・高炭水化物な食事を与えることで、攻撃性が減少したという研究結果も出ています。それがなぜかと云うお話はここでは端折りますが、食べ物がどれだけ犬にとって大切なことなのかが伝えられればと。

 

ちなみに、私自身は愛犬にはタンパク質20%ちょっとのフードを与えるようにしています。

30%では高タンパク質、20%以下では低タンパク過ぎてしまい、長期に渡りレギュラーとして与え続けるには別の影響が懸念されるので、健康維持のためには20%ちょっとくらいが丁度良いかなと云う考えです。

もちろん、添加物や保存料など最低限のものにも気を使うようにしています。

カラフルなドライフードやオヤツも販売されていますが、犬は食べ物のカラフルさに惹かれたりはしません。

 

あまりにも多くの種類のフードが販売されていますので、購入の際に頭を抱えてしまい、フードジプシーになってしまうのも仕方ないことのように感じます。

そんなとき、今回のコラム内容が何かの参考になれば幸いです。

 

最後に、食べ物は犬に多くの影響を与えますが、食べ物だけで犬の行動すべてを変化させようとするのは間違いであることも述べておきたいと思います。

 

今回も拙い文章にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

 

B-Paws 中沢俊恵

命を育てるということ。

文:B-Paws 中沢俊恵CPDT-KA

当たり前のことを何度でも言いますが、犬は”命”です。

犬を飼ったなら、その命が尽きるときまで、その命が健康に正しく生きることができるように最善を尽くさなければなりません。
ペットショップでショウウィンドウに並べられている様子や、インターネット上で洋服や靴の商品のようにオシャレに並べられた写真に、我々人間はそれが犬や猫と云う”命”であると云うことに対して鈍感になっているような気がします。

大人しく立派な成犬を見て「この犬と同じ犬が欲しい」とそう思っても同じ犬種だからといって、同じように育つわけではありません。この当然のこととも思えることが、まだまだきちんと理解されていない気がします。

TVCMや漫画、アニメ等の影響で犬の流行が生じることがまさにそれかな、と。

大抵の場合、流行した犬種はその後に痛々しい話が流れますが、流行ではなくともどこかで見かけた犬を見て「この犬と同じ犬種が欲しい」となってもその後の痛々しいエピソードは、流行した犬種ほど目立ちません。でも、状況は同じです。

犬も猫も、その他の愛玩動物も手に入れようと思えば比較的容易に手に入ります。

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動物を飼うと云うことは命を育てると云う事あり、どれだけ簡単に手に入っても、命に対しての重大な責任が生じることをどうか忘れないでください。

手に入れたパピーはやんちゃで、ひとりぼっちが嫌いで大騒ぎをし、あなたの手足をガジガジするし、大型犬のパピーなら家具をぼろぼろに破壊だってするかもしれませんし、散歩で引っ張る力も強く、大型犬は小型犬に比べて心身の成長速度も遅いのでいつまでたっても子供のように振る舞うでしょう。

犬種による違い、サイズによる違い、飼育環境・生まれた環境・そこまで育った環境による違い、そうした様々な事柄が犬の成長に大きく影響します。

迎えたパピーが成犬と呼ばれるまでのおよそ1年間、成長の真っ只中にある命に対して飼い主はとことん向き合わねばなりません。もちろん、その後も。病気になっても、年老いても、歩くことすらままならなくなっても。

飼い主の与えてくれる環境が、飼われた動物の世界の“すべて”になるのです。

飼い主に与えられる選択肢しか、選択肢がないのです。飼い主が与えてくれなければ選択肢も持てないのです。

 

クリスマスシーズン、命をプレゼント人がいます。

プレゼントする側もされる側も今一度よくお考えいただければと思います。

今、犬を飼っている人もそうでない人も改めて、動物は”命”であるということを認識していただけたらと思います。

 

犬を、猫を、その他の迎える・迎えた動物を最期まで幸せにする覚悟はありますか?

 

今回も拙い文章にお付き合いくださり、ありがとうございました。

愛犬と共に、どうぞ良いお年をお迎えください。

 

 

 

ヴィベケ.S.リーセ RPTM Japanセミナーツアー考察

文:B-Paws 中沢俊恵,CPDT-KA

昨年に続き、ボディランゲージのスペシャリスト:ヴィベケ.S.リーセのRPTM Japanセミナーツアーが開催されました。

およそ1ヶ月間かけて日本各地でおこなわれたセミナーにはいくつかの種類があり、いずれも一般飼い主さんにとってもプロフェッショナルとして活動している方達にとっても目から鱗のセミナーとなり、多くの方に衝撃と感動を残しました。

ヴィベケ.S.リーセ Japanセミナーツアー考察

そうしたヴィベケの素晴らしいセミナーをレポートするべく、何度も何度も文章を書きました。
かなりの時間を費やして書き上げては消去し、また書き上げては消去し・・・を繰り返しました。
結論から言わせていただきますと、ヴィベケのセミナーの素晴らしさを文章で伝えきれません!

2017ヴィベケJAPANツアーヴィベケ.S.リーセと聞いたら、多くの方が「犬のボディランゲージの人ね」と思うことでしょう。
確かにそうかもしれませんが、それは非常に残念なことです。
ヴィベケのメソッドは、“犬をリスペクトする”という理念の上にあるボディランゲージの活用であり、決して表面上だけのコミュニケーションではありません。
重要視されるべきは、そこなのです。

今回のセミナー中にヴィベケが伝えてくれた言葉の中にもありました。

『If you want respect, shows respect.』
(もしあなたが敬意を払って欲しかったら、まずあなたが敬意を払いましょう)

犬を育てる・犬をトレーニングするということは、イコールで“犬を従える”と云うことではなく、ひとつの命に対して敬意を払って接することで犬も応えてくれるようになると云う犬の“協力”のもとに成り立つべきものであり、トレーニングは一方通行であってはなりません。犬に対しても、人に対しても。ヴィベケはそれを何度も強く熱心に訴えます。

2017ヴィベケJAPANツアー

ヴィベケの犬を扱う技術は大変素晴らしいものですが、技術面だけに注目せず「なぜそうする必要があるのか?」までを理解することでより深く見えてくるものがあります。

豊富な知識と動物行動学に基づいた明確な理論はもちろんのことながら、そうした根底部分にあるものこそがヴィベケのメソッド(RPTM)の素晴らしさなのです。

 

どんな事でもそうかもしれませんが、小手先だけの技術だけでは越えられない壁があります。

ヴィベケはセミナー中の質問タイムにも丁寧に応じ、休憩中やセミナー終了後の質問にも熱心に丁寧に応じてくれます。
サインや写真撮影にも、とびきりのヴィベケスマイルで。

約1ヶ月間休む暇もなく毎日のように日本各地を巡り行われるセミナーでの疲労を微塵も感じさせない対応です。
1日も手を抜くことなく、熱心に参加者に語り掛け続けるにはどれほどのパワーが必要か!?と考えただけで頭が下がる思いです。

ヴィベケの本当の素晴らしさはそもそもの人間性にあるのかもしれません。

『Life is the GIFT.』(命は贈り物です)

耳にすれば 「そんなの当たり前!」と思うようなことこそを大切にする、それがヴィベケ・S・リーセと云う人なのでしょう。

ヴィベケ.S.リーセ Japanセミナーツアー考察

今回のセミナーに参加できなかった方も、是非来年のセミナーに足を運んでみてください。
本だけではわからないヴィベケの魅力を生で体感してみてください。
ボディランゲージの大切さを唱えるトレーナーは世界中にいますが、ヴィベケほどボディランゲージをフルに活かしたトレーニングをおこなっているトレーナーはそう多くはないでしょう。

その違いを目の当りにしたとき、今まで以上に犬が愛しくてたまらなくなるはずです!今すぐにでも犬達とコミュニケーションを取りたくなるはずです!

犬達がヴィベケを慕うように、私もヴィベケに魅了されているひとりです。

今後更に、ヴィベケのメソッドが日本に広く深く浸透していくことを強く願っています。

 

拙い文章に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

犬は犬らしく生きてこそ犬の幸福は満たされる

文:B-Paws 中沢俊恵

犬の幸せとは
「犬は人ではありません。」
当たり前に聞こえますが、犬と接する人はどれだけ犬のことを正しく理解し、受け止めているのでしょうか。
コラム2画像私たちが日常の中で当たり前に出来ていること、そこには人間としての本来の行動が多く含まれています。
それらの行動を禁じられると私たち人間は多大なストレスを抱えることとなります。
犬はどうでしょうか?犬としての本来の行動を、どれだけ日常の中で当たり前として行動出来ているのでしょうか?犬は私たちにとってあまりにも身近な存在であるせいか、“犬”であることを忘れられたように扱われることが多いと私は感じます。

犬は犬であるべきだし、犬らしく生きてこそ犬の心理学的幸福は満たされます。

「そもそも“犬らしさ”とは何なのか?」と考えた時、その正体を説明するのにしっくりくる言葉がなかなか浮かびません。しかし、私の中に明確にそれはあり、だけれども第三者にわかりやすく伝えようとするとなんだか妙な表現になってしまうことがあります。本当はそんなに複雑なことではないはずなのに、なぜそうなってしまうのか。「犬らしく」などと言わなくてはならない時点で、すでに違和感のある世の中だだなぁとも思えてしまいます。

多くの飼い主は愛犬を喜ばせたいと常日頃考えているはずですが、犬を喜ばせるための選択基準が、飼い主自身が望んでいることなのか?愛犬が望んでいることなのか?によっては、愛犬の為と思っておこなっていることが必ずしも愛犬の望んでいることとは限らなくなってしまいます。“愛犬の為”という名のもとで満たされているのは飼い主自身だけかもしれないということが、十分にあり得るということです。
「今度の休日には愛犬へのサービスとして、みんなを誘って遠くへ出かけて、思いっきり走り回って美味しいカフェに行って楽しませてあげよう!」と思っても、もしかしたら愛犬はお出掛けよりも、日頃忙しい飼い主とふたりでのんびりと休日を過ごしたいかもしれません。もしかしたら、他の犬や人は一緒でない方がくつろげるかもしれません。

犬の望むことを読み取るには・・・
「そうはいっても、どうやって愛犬が望むことを知ればよいのだろう?愛犬がいつどんな瞬間にどんな気持ちでいるのかを知るにはどうしたらよいのだろう?」
その答えを探ろうと思ったら、犬のボディランゲージを知る必要があります。ボディランゲージを知ることで、犬の感じている快・不快を正しく知ることが出来ます。そして、犬とはそもそもどういった動物なのかを知ることによって犬が持つ本来の姿を知ることが出来ますので、より犬の喜ぶことを探れるようにもなるでしょう。

例えば、ドッグランで他の犬達と楽しく追いかけっこをしていると思っていたけれど、ボディランゲージを読み取ると、実は相手を追い払うため・助けが得られずに追い詰められて不安を感じていたということがあります。そうとは知らずに追いかけっこを続けさせているうちに、愛犬が犬嫌いになってしまった!なんてことも。もしボディランゲージを読み取れたら、その場から愛犬を救い出す・ドッグランを出る・ドッグランには行かない等の選択肢が取れ、不必要に愛犬を不安に晒さなくて済むようになるのです。そして、愛犬が喜ぶ他の何かを見つけることも可能になっていくのです。
他にも例を挙げると、ボディランゲージを読み取ってみたら、実は愛犬は撫でられることに不快感を感じていた!なんてこともあります。これはなかなかショックです。しかし、愛犬が不快感を感じない撫で方や撫でる位置などを知ることが可能となり、結果的に愛犬との絆が更に深まることへと繋がります。
このように、まずボディランゲージを通して犬の感じていることを正しく受け止めることから始めてみるのはいかがでしょうか。

・・・と偉そうに言っている私も犬についてまだまだ勉強中の身です。飽きもせず15年もの間ずっと。そしてこれからも飽きることなく犬を知ろうとすると思います。犬と私自身が同種でないからこそ、です。
ちなみにですが、今の私が生きていくうえで「人間らしく」と考え悩んだことはありませんが、もし「人間らしく」と考え悩み出したとしたら、その時点で恐らく私はきっとツライ思いをしているのではないかと思うので、その台詞を吐かずに済んでいる現状は幸せなのかもしれません。

犬と人が幸せな関係でありますように。

今回も拙い文章にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

中沢俊恵 Toshie Nakazawa http://b-paws.com/
<取得資格>
・日本ドッグトレーナー協会 A級ライセンス
・国際資格 CCPDT認定 CPDT-KA
・愛動物福祉協会 愛玩動物救命士
・JKC 愛犬飼育管理士